薬指の約束は社内秘で
「なんだよ?」

「いえ。葛城さんって損してるなぁって思って」

「はぁ?」

「あんな言い方をしたら敵を作るばかりですよ?」

葛城さんはふんっと鼻を鳴らし眉根を寄せる。
そんな彼を横目に、お節介ながらも思ってしまう。


これでもう少―し、可愛げがあればなぁ。
皺ばっかり刻んでたら綺麗な顔が勿体ないのに。

それにしても、いつから私の後ろにいたんだろう?


チラリと目線を斜め上へ引き上げる。
葛城さんは会場のある一点を見つめながら、「なぁ」と小さく漏らした。

「料理がきたみたいだな」


彼の視線を追うとオープンテラス近くの料理テーブルが賑わっているのが見えた。
本日のお料理はフランス料理界の巨匠とも呼ばれる人がプロデュースしているらしい。

その独創的な料理を一度味わってみたいと思っていたから、

「あっ、本当ですね。じゃぁ、はりきって食べましょうか」


あぁ、お腹を空かせて来てよかったぁ。

朝よりずっと平たくなったお腹に手を添えると、すっかり見慣れた意地の悪い笑みが私を見下ろした。
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