薬指の約束は社内秘で
「俺はパス。あと少しで友人スピーチがあるし。張り切るのは、おひとりでどうぞ?」


「えっ、でも――……」


いまだって私の存在を疎ましく思っている視線を痛いほど背中に感じる。


私が彼のそばを離れたら、きっと声を掛けるだろう。

そう思うだけで胸がキリキリと痛みを放つのに。


「食い物の恨みは怖いって言うしな。食べることに人一倍執着がある藤川の邪魔をしたら、

後で変な呪いでもかけられそうだし」


「呪いって。まさか、そんなこと、シナイデスヨ……」


出会った頃にかけてやった呪いの数々を思い出す。

言葉の語尾がおかしくなって「ははっ」と笑って誤魔化しながら、仕方なくその場を離れた。


彩り鮮やかなビッフェテーブルで、

前菜からメインディッシュと取り分けていると、プレゼンの時にお褒め頂いた役員に声を掛けられた。
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