薬指の約束は社内秘で
バシャッ


ワインのしずくが首筋と胸元に飛び散る瞬間、ギュッと強く瞳を閉じた。

今日は軽装でコンタクトの替えは持ってなかったから、ワインが目に入らなかったことにホッとする。


「藤川――……」


消え入りそうな細い声。

瞳を開くと、葛城さんが呆然とした顔で私を見下ろしていた。


薄く唇を開いたままでいる彼の上着にそっと触れる。

触った感触は飛び散ってないみたい。
「よかった」と心で呟き、胸を撫で下ろした。


そうしている間も冷たい感触が首筋を伝い落ち、胸元に染みの広がりを作っていく。

でもそんなことよりも、声にもならない想いが込み上げる。

弾けそうになる感情をなんとか堪えようとする。

だけど――……


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