薬指の約束は社内秘で
「ごめん、ちょっと酔って。足元がふらついてさ」

わざとらしく頬を引き攣らせた横顔に、適当な言い訳で逃れようとするその態度に、もう我慢の限界だった。


「田村君っ」


自分でも驚くほどの鋭い声。
田村君がハッと息を呑み顔を強張らせる。

何を言いたいのかわからない。

でもそれくらい冷静さを失い、ただただ頭に血が上っていって、感情そのままに田村君と対峙する。


怒りに震えた唇を開きかけると、それを制するような強い力が私の肩に加わった。


「いいから」

高ぶった感情を諭すような声に、振り返った先にある静かな瞳に、ようやく我に返れた。


葛城さんは何かを堪えるように押し黙りスーツのジャケットを脱ぐと、ふわりと私の肩を包み込む。

そして遠目から眺めるたくさんの視線に小さく頭を下げてから、私の肩を抱き寄せ足早に歩き出した。

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