薬指の約束は社内秘で


広い廊下に出てからも抱かれた肩が解放されることはなく、葛城さんは無言で歩みを進める。


右肩から伝わる微かな震え。

勘の鋭い葛城さんのことだ。
自分の背後で起きた出来事を一瞬で悟ったと思った。


それと同時に感情を抑えきれなかった自分を恥ずかしく思う。

あの状況で冷静さを欠き田村君に噛みついたとしても、彼のあの様子では反省なんてしないだろうし。

きっと適当な言い訳でその場を逃れるだけだろう。

会場の雰囲気を壊し事態を悪化させることは、冷静に考えれば想像できたはずだった。


もしかしたら、田村君の狙いは――
そこにあったのかもしれないのに。


あぁー、もうっ! ダメダメだなぁ、私。もう少し冷静にならないと。

どんな状況でも冷静に対応し、スマートに会場を後にした葛城さんに感謝する。
< 138 / 432 >

この作品をシェア

pagetop