薬指の約束は社内秘で
広い廊下に出てからも抱かれた肩が解放されることはなく、葛城さんは無言で歩みを進める。
右肩から伝わる微かな震え。
勘の鋭い葛城さんのことだ。
自分の背後で起きた出来事を一瞬で悟ったと思った。
それと同時に感情を抑えきれなかった自分を恥ずかしく思う。
あの状況で冷静さを欠き田村君に噛みついたとしても、彼のあの様子では反省なんてしないだろうし。
きっと適当な言い訳でその場を逃れるだけだろう。
会場の雰囲気を壊し事態を悪化させることは、冷静に考えれば想像できたはずだった。
もしかしたら、田村君の狙いは――
そこにあったのかもしれないのに。
あぁー、もうっ! ダメダメだなぁ、私。もう少し冷静にならないと。
どんな状況でも冷静に対応し、スマートに会場を後にした葛城さんに感謝する。