薬指の約束は社内秘で
一人になった更衣室で小さく息をつく。この後の予定を考えるとやっぱり気が重かった。
近くにあるパイプ椅子に腰かけると、新しい恋に踏み出せない私を心配した親友の言葉が頭を過った――


『婚活バーにでも行ってみれば?』

私と同じ静岡の高校を卒業して、同じ東京の大学に進んだ愛美(マナミ)は、つい最近結婚が決まった。
そんな彼女の薬指には、私がまだ掴むことが出来ずにいる幸福の証がいつも輝いている。

『愛が瑞樹君のこと忘れられない気持ちも分かるよ。初恋の人に再会するなんて運命だって私も思ったし。だけど』

そこで言葉を止めた彼女の瞳が揺れ動く。

その後に続く言葉は、聞かなくてもわかってる。だって、もう何度も聞いた言葉だから。
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