薬指の約束は社内秘で
目の前にいるこの人は、本当に葛城さんなの?

近くにある全身鏡の前でネクタイの結び目を手早く直し始めた長い指先を見つめていると、不意に彼が振り返った。

ゆっくり歩み寄った彼の顔が斜めに傾く。

長く触れ合った唇からふっと漏れた吐息が頬を掠めて思わず瞳を閉じると、まだ乾ききっていない下唇が親指でなぞられる。

ピクッと肩を跳ね上げたら、小さな笑い声が漏れた。

「悪い。時間切れ」

いたずらっぽい声に瞳を開くと、数秒前まで色気を含んでいた瞳は意地悪く細まり、唇から指を離した葛城さんと見つめ合う。

でもそれは、ほんの一瞬のことで。
すぐに彼は何事もなかったようにスーツのジャケットに袖を通し始めてしまった。
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