薬指の約束は社内秘で
「ごちそうさまでした。それにしても、相変わらず手間をかけてますねー、奥さん」

食べ終わったお皿をふたりで片づけながらシンクの隣に立つ愛美に冷やかしの視線を流すと、「まだ違うから」と愛美は薄く笑ってから視線をスポンジの中の食器に落とした。

私が記憶するに一度も色を乗せたことのない彼女の黒髪は、ベージュのシュシュで耳の横にまとめられている。

成績優秀、容姿端麗。

そんな言葉がよく似合う愛美は、高校時代に生徒からの人気投票で選ばれる校内ミスコンに2回も選ばれていた。

そんな愛美と私が初めて話したのは、高校1年の秋のこと。
美術の課題の水彩画を「真面目にやれ」と、先生から再提出を告げられた私を助けてくれたのが、隣のクラスの愛美だった。


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