薬指の約束は社内秘で
「他人の評価なんて、どうでもいい」

そう強く言い返したことで私も嫌な思いをしたけど。

「自分の考えが正しかった」と身を持って痛感したのは、高校を卒業して数ヵ月後のことだ。


ほろ苦い記憶に頭が痺れ出す。

「ねぇ」と柔らかい声が思考を呼び戻してくれた。

「愛が買って来てくれたケーキ、おいしいね。でも、ごめんね。コーヒー切らしちゃってて」

ゆらり立ち昇る白い湯気の先には、すまなそうにまつげを伏せた愛美の顔があって、「そんなっ」と慌てて声を張る。

「このハーブティーもすごくおいしいよ。でも、愛美の家でハーブとか初めて飲んだかも」

「うん。最近ね、はまってるの。肌にいいし、安眠効果もあるらしいから」

「なるほどねぇ。どうりでまた綺麗になったと思った」


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