薬指の約束は社内秘で
冷やかすように言ったら、「そんなことないよ」と愛美は控え目に返してきた。

結婚がゴールとは思わないけど。

久々に始まったばかりの恋を思うと、結婚式を控えた愛美が眩しく一段と綺麗に見えてしまう。

「結婚するんだもんねぇ」

思わず漏れた言葉に愛美は少し困ったように微笑むから、

「あっ、ごめん! なんか……本当に羨ましいっていうか。私はまだまだ先のことだなぁって」


ついつい羨ましさ全開の声が出てしまい、
「ははっ」と誤魔化すように笑って視線を泳がすと、窓際に置かれたチェストが視界に入った。

白いチェストの上には私が婚約祝いとしてプレゼントしたアンティーク風な置き時計が置かれていて、

「時計飾ってくれてるんだね」

ぼんやり呟いたら、「うん」と小さく頷いた愛美は椅子から立ち上がり、時計に歩み寄る。

時計の針は20時を少し過ぎたところで、

「ドイツはいま何時なんだろう?」思わずそんな呟きが漏れた。


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