薬指の約束は社内秘で




「失礼しました」


小さく頭を下げ、静かにドアを閉める。

声が少し震えちゃったかな?

新車プロジェクトの資料を届けただけだけど、秘書室ってなんか独特の雰囲気があるんだよね。

入社以来訪ねる機会のなかった場所を後にして、変な汗が背中を伝った気がした。

このビルで一番清掃が行き届いているであろう廊下に出てから、ようやく息をつく。

この一週間『日付よ進め進め』と指折り数えて過ごしていたら、葛城さんが出張から帰国するのは、もう明日になっていた。

葛城さんの宿題も、この後頑張れば今日の定時内に終わりそうだし。

そう思うと気持ちが高まって廊下を進む足も速くなる。

エレベーターを待つ時間も惜しくて、階段を使い3つ下の経営統括室のフロアへ戻ることにした。

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