薬指の約束は社内秘で
「話さないよ。そんなことしない」

「ふーん。別に、言いふらしてもいいけど」

「言いふらすだなんて。そんな言い方、傷つくよ。あの人も――……瑞樹の婚約者も」

ここ最近の社内は、瑞樹がお見合いした女性と婚約したという噂で持ちきりだった。
私も美希ちゃんに話を聞いて知っていたから、遠慮がちに続けた言葉に瑞樹は柔らかく笑う


「あぁ、あれね。得意先の人が間に入ってるから、お見合いの後で1度会っただけなのに。

女の子の噂って勝手に大きくなるから、怖いよね。でも、そろそろちゃんと返事しないと相手にも悪いよなぁ」

瑞樹はどこか他人事のように呟いて、「ねぇ」とこちらに歩み寄る。

整髪料の爽やかな香りが鼻をつく。
あまりにも近いそれに距離を取ろうとすると肩に手を置かれて、耳元でそっと囁かれた。

「ごみついてる」

「ありがとう…ございます」

なんだ、ごみ取ってくれたのか。

ホッと胸を撫で下ろすとふっと小さく笑われる。
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