薬指の約束は社内秘で
ははっ。我ながらいい部屋に住んでるよね――って、ちょっと待て!

目を何度かしばたたかせる。ついでに頭も振ってみる。でもそれを何度繰り返しても変化はない。
二日酔いでぼんやりとした頭が、ようやく正常モードに動き出した。

ここは、どこ? 私は――藤川 愛。いや。さすがにそれは、わかるけど。

困惑しながら辺りを見渡す。すると同じベッドに横たわる物体に、ヒュッと変な息が漏れた。
バスローブに体を包んだソレからの微かな寝息に、一瞬で置かれている状況と展開が読めた。

一体、なぜ、こんなことに――……

寝癖で乱れた髪をぐしゃぐしゃにして頭を抱える。
すると毛布と同じ質感の淡いベージュ色のバスローブが肩からずり落ちて、頭がさらに重くなった。

バスローブの下に着ているワンピースは昨夜と同じもので、背中に手を回すとファスナーが半分下ろされていた。

私だって年相応に経験はある。でも出会ったその日に流れでっていうのは一度もない。
一夜限りの女になりたくない。そんなプライドがあったから。

『俺、愛ちゃんに運命感じちゃった』

それは意識がある時に聞いた最後のセリフだ。

「この人が運命の相手なのかな」

こうなってしまったら、そうであってほしい。そんな願いを込めて呟く。
すると寝息を立てていた物体から、「運命とか言って、笑える」酷い悪態を返された。

ナニ、イマノ? ソラミミ??
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