薬指の約束は社内秘で
「いい年してそんなこと言ってたら、いつまで経っても結婚出来ないってのにっ」

ははっ。やっぱり空耳だって。だってあんなに優しかった彼がこんな悪態つくわけないでしょう? 

そう思っていたのに、不機嫌そうなため息をついて起き上った彼が寝癖のついた前髪を掻き上げる。
前髪から覗く涼しげな瞳に見つめられ、心臓が止まりそうになった。

「いつまで夢見るつもり?」

一体、なぜ、よりにもよって……

心の声を喉に押し込んだ自分を褒めてやりたい。

多分、いや、間違いなく。いままでの人生で記憶にないほどの絶望感に包み込まれた私に、ここにいるはずのない彼、葛城さんは小さく息を吐いてから状況を説明してくれた。

「一緒にいたツレが助けてやれって言うから」

なるほどなるほどー。どうやら酔いつぶれた私をホテルへ連れ込もうとした男が許せなかったと。

なんとまさかの救世主ってオチ? いや、それも少し違っていた。

「俺は、どーでも、よかったんだけど」

心底面倒くさそうに吐き捨てられ「どーでも」のところを強調までされ、ムカッとくる。
でもホッと安堵の息が漏れた。――て、ちょっと待て。まだ安心するな、私!
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