薬指の約束は社内秘で
「じゃあどうして私はっ、こんな格好でいるんですか!?」

他人がホテルに連れ込むのは許せなくても、自分が連れ込んで好き放題はOKなのか!?

私のお給料が一夜で飛んでしまいそうなこの部屋は、婚活バーの近くにあった外資系ホテルらしい。

一生縁がないと諦めていた高級ホテルに、こんな形で来たくなかったのに……
恨みを込めて睨んでやったら、眉間に深く皺を刻んだ顔で睨み返された。

「誰かさんが寝返りを打つ度に、ブチブチって煩いんだよ」

なんの話?

「無理してサイズの小さい服なんて着るからだろ。背中の縫い目が裂けてた。仕方ないからファスナー下ろしてやったら、見たくないもん見る羽目になった」

彼の言葉に慌てて背中に手をまわす。確かに縫い目が裂けているのが指先の感触で分かった。
お気に入りのブランドで一目惚れしたワンピースは、淡いグリーン地で上品な刺繍とビジューが胸元を華やかにしてくれる。

いつものサイズが売り切れでワンサイズ小さいのを買ってはみたけど、やっぱり無理だったみたい。

でも見たくもないモンって。噂通りに容赦ない。そう思うと、ちょっと……いや、かなり悔しい。

でも勘違いをした謝罪はしておくべきだよね。
気持ちを落ち着かせる為にコホンッとひとつ咳払いをしてから、毛布にくるまった状態で彼と向き合う。

「あのっ、勘違いしてすみませんでした。それと――」

そう。きちんと謝ってから確認しておきたいこともある。
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