薬指の約束は社内秘で
耳を傾けていないと聞き流してしまいそうな声。「えっ?」と問い返すと課長はぎこちない笑顔を浮かべる。

珍しい課長の表情に、「私が立ち入ってはいけないことだ」と心では分かっているのに。
ドクンッと鳴り響く鼓動に促され、頭に過ったことを口にしていた。


「もしかしてそれって、葛城さんが会長の孫ってことと関係ありますか?」

私の問いかけに課長は瞳を大きくしてから、「そっか」と小さく呟く。

「葛城君から聞いたんだよね? やっぱり藤川さんは、彼にとって特別ってことなんだなぁ」

「えっ。特別って、そんなことないと思いますけど」

「社内でも知られてない話だからね。やっぱりそういうことなのかなって思うよ?」


課長はからかうような口調で場の雰囲気を和まそうとするけど、一瞬見せた悲しげな色を宿した瞳は誤魔化せない。

やっぱり私が立ち入っていい問題じゃないよね。誰にだって踏み込んでほしくない領域があるのに……

葛城さんに近づけた嬉しさから、彼をもっと知りたいと欲深くなった自分が心底嫌になる。
適当に話題を変えようと口を開きかけた私に、課長はいつもの柔らかい笑顔で『二人の関係』を教えてくれた。
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