薬指の約束は社内秘で
予想が当たったといっても、ここには緑茶とコーヒーしかないみたいだし。
彼が食後に緑茶を好んで飲むことは、何度かランチをご馳走になって知っていた。

湯呑みから立ち昇る柔らかい湯気が不機嫌な葛城さんの表情を和らげ、ホッと息をついたものに変えてくれる。


実はこれが、最近の楽しみだったりするんだよね。

仕事中は隙のない彼が緑茶を楽しむその時間だけは幸せそうな顔を垣間見せる。

だから二人で残業をする時には二人分のお茶を淹れて、こっそり葛城さんの顔を見つめながらのブレイクタイム。

それは経営統括室に臨時で席を置く間でしか見ることのできない貴重な時間だと思っていたのに。


まさかプライベートでも、こんな時間ができるなんて……

私だけが知っている葛城さんの素顔。
ずっと見ていたい。この時間がずっと続いたらいいな。


無理に会話をしなくても穏やかな時間が流れていく。

お年寄りの茶飲み友達ってこんな感じなのかな?
飲み終えた湯呑みを見つめながらそんなことを思うと、「いけない!」と思わず声がでた。
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