薬指の約束は社内秘で
「こんにちは。お仕事帰りですか?」
スーツ姿の彼女にそう声をかけながら自分の花瓶を手に持つと、山下さんは、「えぇ」と小さく頷いてからチラリと視線を向けてきた。
何か言いたげな瞳。でもそれはすぐに逸らされてしまう。
もしかして、あのときのことを誰かに話したって、思われてるのかな?
あの日見た二人の抱擁は、美希ちゃんはもちろん社外の人間にも話してはいない。
それとは別に、瑞樹が断ると言っていたお見合いは、相手はかなり乗り気らしいと噂で聞いた。
二人の関係は分からないけど、社長秘書という立場上まずかったりするんだよね、きっと……
「あのっ、山下さん。私、あのときのこと誰かに話したりしてませんから」
大きめの花瓶に花を挿していた山下さんの手が止まる。
下を向いていた彼女の視線がゆっくり引き上がった。
「はい。それは、噂になってないので、そうだと思ってました」
「えっ。じゃぁ――」
どうして、そんな目で私を見るの?
心の問いかけに、山下さんは微かに瞳を揺らす。
そして小さく息を吐き出した後、意を決したように彼女は口を開いた。
スーツ姿の彼女にそう声をかけながら自分の花瓶を手に持つと、山下さんは、「えぇ」と小さく頷いてからチラリと視線を向けてきた。
何か言いたげな瞳。でもそれはすぐに逸らされてしまう。
もしかして、あのときのことを誰かに話したって、思われてるのかな?
あの日見た二人の抱擁は、美希ちゃんはもちろん社外の人間にも話してはいない。
それとは別に、瑞樹が断ると言っていたお見合いは、相手はかなり乗り気らしいと噂で聞いた。
二人の関係は分からないけど、社長秘書という立場上まずかったりするんだよね、きっと……
「あのっ、山下さん。私、あのときのこと誰かに話したりしてませんから」
大きめの花瓶に花を挿していた山下さんの手が止まる。
下を向いていた彼女の視線がゆっくり引き上がった。
「はい。それは、噂になってないので、そうだと思ってました」
「えっ。じゃぁ――」
どうして、そんな目で私を見るの?
心の問いかけに、山下さんは微かに瞳を揺らす。
そして小さく息を吐き出した後、意を決したように彼女は口を開いた。