薬指の約束は社内秘で
「申し訳ありません」

「謝らないでいい。それよりもお前の母さんにする言い訳を考えた方がいい」

「母さんにも自分の想いをきちんと伝えるつもりです。それが母さんの為にもなると思うので」

「そうか、そうだな。あれも、いつまでも瑞樹に依存するようではな」

そこで言葉を切った会長の視線が私に向けられ、わずかに瞳を細めた会長が柔らかく言った。

「藤川さん。今日は、あなたに会えてよかった。私はまた……同じ過ちをするところだった」






雨上がりの色濃い夕日が病室をほのかなオレンジ色に色づける。

あれからすぐ看護師さんと会長が検査の為に病室を出て行くと、瑞樹は会長が寝ていたベッドに腰掛けながら、「さっきの会長の話だけど」と語り出した。

「優生と俺が従兄弟だってことは、知ってる?」

「うん」

「俺の母親は自分の兄だった優生の父親が瀬戸の家を勘当のような形で出て行って、親父と見合い結婚したんだ。

他に好きな人がいたみたいだけど、会社を任せられるって思わなかったんじゃないかな。諦めたみたい。

だから母さんは、伯父さんが家を出なかったら自分の人生変わってたのにって、いまでも伯父さんを恨んでる。それは親父に愛人がいるってこともあるんだけどね。

可哀そうな人。なんだよね……」
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