薬指の約束は社内秘で
向けられる瞳があまりにもまっすぐで思わず視線を逸らすと、瑞樹はふっと小さく笑う。

「実は、転属願いを親父――いや、社長に出すのは、もう8回目。今度こそはって時間をかけて説得したら、やっと受け取って人事に回してくれた」

「そう……だったんだ」

入社したての頃、何度か思ったことがある。
瑞樹の乗ったエレベーターが社長室の最上階で止まるのを見る度、その場所は本当に彼が望んでいる場所なのかって。

何度か直接聞こうとしたこともあった。けれど――……
その度に、私を避けるように顔を背けた彼に傷ついて、結局何も言えなかった。

やっぱり私が思っているより、ずっと難しい立場にあったんだ。

だからいま、夢を叶えた瑞樹の笑顔を嬉しく思う。
少し前まで僅かに残っていたわだかまりも、いまは完全に消え失せていた。

気まずさとは違う沈黙が流れていく。
それを破るように瑞樹はそれまでとは違うトーンの低い声で、「3年前のこと話していい?」と切り出した。

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