薬指の約束は社内秘で
「そんなことばかり考えてたら、いつしか楽しそうに夢を語る愛を責めたくなった。
どんなに頑張ったって、俺には叶えられないのにって。

何も知らない愛は、何も悪くないのに……
何も知らないことさえ、責めてしまいそうになった。

だから――……そんな自分に嫌気がさして、自分からさよならしたんだ」


淡々と語り続けた唇はそこで閉ざされた。

顔を歪ませながら本音をぶつけてくれた瑞樹に、何か言わなきゃいけないのに。
薄っぺらい言葉しか頭に浮かんでこない自分に、奥歯を噛み締めることしか出来ない。

それを悟ったように瑞樹は笑ってみせるから、こんなに時にでも私を気遣う優しさに、胸が押し潰されそうになる。

あのときも、そうだったの?
そうやって――……笑ってくれていたの?

夢を語る私の隣で瑞樹がどんな思いでいたのか。

どうして気づけなかったんだろう。どうして見逃してしまったんだろう。

どんなに隠したって、完全には隠し通せるわけがない。
きっとサインがあったはずなのに……

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