薬指の約束は社内秘で
必死に頭を巡らせて、思い当たることは一つだけあった。

夢を語る私に、いつしか瑞樹が反応しなくなったとき。
「疲れてる」とか「それよりさ」と話を何気なく流されたことが何度かあった。

少し気にはなったけど、その頃は二人とも内定を貰っていたし、彼の言葉をそのままに受け止めてしまった。

話したくないタイミングもあるんだと
本当に聞いてほしいことなら、瑞樹から話してくれるのを待てばいいって。

付き合っているからといって、彼の心にずかずかと踏み込む真似はしたくない。
そんなお節介がすぎることをしなくても、私達は分かり合えている。

彼のすべてを知って、分かり合えている……

心で呟くとスッと背中に冷たい汗が流れるのを感じた。

そんなことあるわけがないのに、どうしてそう思ってしまったんだろう。

どんなに語り合っても、そこに相手を気遣う優しさや、自分を飾るための見栄や嘘があったら、その心をすべてを知ることなんて、きっとできない。

だからこそ私達はそこにある小さなサインを見逃さないように、ちゃんと向き合って、たくさんのことを話さなければならなかった。

それが出来ていたら、いつか別れが訪れたとしても、あんな別れにはならなかったのかもしれないのに。

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