薬指の約束は社内秘で
「やっぱりダメだなぁ、私」
他人の気持ちに鈍感な自分に嫌気がさして、重いため息を吐き出す。
ひとりしかいないエレベーターにチンッという到着音が響き、扉が微かな音を立て横に開いていく。
それをぼんやりと見ている自分にハッと気づき、足を速めて慌てて降りる。
勢いよく前に踏み出した右足と左手。ドクンッと心臓が強く脈を打った。
もしかしてあれは、そういうことだったの?
あの日葛城さんから逃げるように立ち去った愛美の後ろ姿が頭を過る。
それより少し前に彼女が見せた異変が何だったのか、今頃気づいた。
『あれ』がなかったのは、あのときだけだった?
震える心に問いかけると、もう一人の自分が「分からない」と悲しげに答える。
その声に反応するように、いつか交わした会話が鼓膜から響いてきた。
いつか愛美の家を訪ねたとき、愛美は珍しくハーブティーを出してきた。
肌に良くて安眠効果もあるから、はまってるって言ってた。でも本当にそれだけだった?
あのとき気付けなかった彼女の想いが、数日前のランチで気づいた異変と繋がっているとしたら――
言いようのない想いでまぶたの裏が焼けつくように熱くなり、早足でロビーを後にする。
電車を乗り継ぐ時間も惜しい。
タクシーを使って彼女のマンションまでの道を急いだ。
他人の気持ちに鈍感な自分に嫌気がさして、重いため息を吐き出す。
ひとりしかいないエレベーターにチンッという到着音が響き、扉が微かな音を立て横に開いていく。
それをぼんやりと見ている自分にハッと気づき、足を速めて慌てて降りる。
勢いよく前に踏み出した右足と左手。ドクンッと心臓が強く脈を打った。
もしかしてあれは、そういうことだったの?
あの日葛城さんから逃げるように立ち去った愛美の後ろ姿が頭を過る。
それより少し前に彼女が見せた異変が何だったのか、今頃気づいた。
『あれ』がなかったのは、あのときだけだった?
震える心に問いかけると、もう一人の自分が「分からない」と悲しげに答える。
その声に反応するように、いつか交わした会話が鼓膜から響いてきた。
いつか愛美の家を訪ねたとき、愛美は珍しくハーブティーを出してきた。
肌に良くて安眠効果もあるから、はまってるって言ってた。でも本当にそれだけだった?
あのとき気付けなかった彼女の想いが、数日前のランチで気づいた異変と繋がっているとしたら――
言いようのない想いでまぶたの裏が焼けつくように熱くなり、早足でロビーを後にする。
電車を乗り継ぐ時間も惜しい。
タクシーを使って彼女のマンションまでの道を急いだ。