薬指の約束は社内秘で
「それで、今度はどちらに?」
「とりあえず、この場所から離れて下さいっ」
フロントミラー越しに運転手が言われて一番困るであろうセリフを告げると、車は彼の戸惑いを表すようにノロノロと動き始めた。
微かなエンジン音が足元から伝わる後部座席に背中を預ける。
突きつけられた現実から逃れるようにまぶたを閉じた。
それでも無言で向き合う二人の姿は暗いまぶたの裏で、鮮明に焼きついたままだった。
それから二日後の月曜日。ぼんやりした頭に、「藤川さん」と遠慮気味な声が紛れ込む。
声のした方へ視線を流すと困惑気味の仙道さんの顔がそこにはあった。
いけない、いま仕事中なのに。なにしてんだろ……
数十センチ先にあるパソコン液晶モニターに、いまが仕事中だと我に返る。
昨日ドイツでの残務処理を終えて帰国した仙道さんに、彼女がいない間の引き継ぎをしているところだった。
この引継ぎが終わったら私は経営統括室の仕事を外れることになっている。
葛城さんと会社で顔を合わせることもほとんどなくなる。
そう思うと胸がキリキリと音を立て、愛美の泣きそうな顔が頭に浮かんだ。
相変わらず、愛美とは連絡が取れない。
電話の電源を入れてないのか、着信拒否なのか。
でも直接会いに行く勇気も、あの日のことを葛城さんに聞く勇気もまだ持てなかった。
自分の心の弱さがたまらなく嫌になる。
小さくため息をつくと、「ねぇ」と隣の仙道さんから声を掛けられた。
「とりあえず、この場所から離れて下さいっ」
フロントミラー越しに運転手が言われて一番困るであろうセリフを告げると、車は彼の戸惑いを表すようにノロノロと動き始めた。
微かなエンジン音が足元から伝わる後部座席に背中を預ける。
突きつけられた現実から逃れるようにまぶたを閉じた。
それでも無言で向き合う二人の姿は暗いまぶたの裏で、鮮明に焼きついたままだった。
それから二日後の月曜日。ぼんやりした頭に、「藤川さん」と遠慮気味な声が紛れ込む。
声のした方へ視線を流すと困惑気味の仙道さんの顔がそこにはあった。
いけない、いま仕事中なのに。なにしてんだろ……
数十センチ先にあるパソコン液晶モニターに、いまが仕事中だと我に返る。
昨日ドイツでの残務処理を終えて帰国した仙道さんに、彼女がいない間の引き継ぎをしているところだった。
この引継ぎが終わったら私は経営統括室の仕事を外れることになっている。
葛城さんと会社で顔を合わせることもほとんどなくなる。
そう思うと胸がキリキリと音を立て、愛美の泣きそうな顔が頭に浮かんだ。
相変わらず、愛美とは連絡が取れない。
電話の電源を入れてないのか、着信拒否なのか。
でも直接会いに行く勇気も、あの日のことを葛城さんに聞く勇気もまだ持てなかった。
自分の心の弱さがたまらなく嫌になる。
小さくため息をつくと、「ねぇ」と隣の仙道さんから声を掛けられた。