薬指の約束は社内秘で
「ごめんね。急に」
「やだなぁ、そんなの気にしないで下さいよ!」
明るく言った美希ちゃんに背中を軽く叩かれると、こんなやり取りを愛美ともよくしたことを思い出して、また目頭が熱くなる。
いまにも零れ落ちそうな熱をグッと目の奥に押し込む。
隣に座る彼女がグラスに視線を落としながら懐かしそうに語った。
「まだ私が新人の頃。課長にいびられる度に、よくここで愚痴を聞いてもらいましたよねぇ」
「そう……だったかな?」
「そうですって! だから今日は、先輩が私に甘えちゃって下さい」
にっこり笑った美希ちゃんは、「まずは乾杯!」と私のグラスに自分のそれを小さく押し当てる。彼女の明るい笑顔に少しだけ元気もらえた。
高校を卒業して地元を離れ一人暮らしをしたら、少しだけ大人になれた気がした。
大学を卒業して社会人になったら、強い大人になれた気がした。
でも些細なことですれ違ったり、人を好きになって傷ついたりして。
私はまだ恋なんて知らなかった幼い頃より、ずっとずっと弱くなってしまったのかもしれない。
「やだなぁ、そんなの気にしないで下さいよ!」
明るく言った美希ちゃんに背中を軽く叩かれると、こんなやり取りを愛美ともよくしたことを思い出して、また目頭が熱くなる。
いまにも零れ落ちそうな熱をグッと目の奥に押し込む。
隣に座る彼女がグラスに視線を落としながら懐かしそうに語った。
「まだ私が新人の頃。課長にいびられる度に、よくここで愚痴を聞いてもらいましたよねぇ」
「そう……だったかな?」
「そうですって! だから今日は、先輩が私に甘えちゃって下さい」
にっこり笑った美希ちゃんは、「まずは乾杯!」と私のグラスに自分のそれを小さく押し当てる。彼女の明るい笑顔に少しだけ元気もらえた。
高校を卒業して地元を離れ一人暮らしをしたら、少しだけ大人になれた気がした。
大学を卒業して社会人になったら、強い大人になれた気がした。
でも些細なことですれ違ったり、人を好きになって傷ついたりして。
私はまだ恋なんて知らなかった幼い頃より、ずっとずっと弱くなってしまったのかもしれない。