薬指の約束は社内秘で
それでも辛いことがあったら誰かに支えられて、なんとかやってこれた。
職場では、ミキちゃんが。仕事がない日は、愛美が――

愛美。

心でそっと名前を呼ぶと高校時代の記憶が鮮明に蘇る。

容姿端麗な彼女はつまらない嫉妬からいじめにあうこともあった。
でも決して涙を見せなかった彼女が、葛城さんの前ではひどく儚げで消えてしまいそうに見えた。

彼と向き合う彼女のいまにも泣きそうな顔が頭を過ると、胸がズキンッと締めつけられた。

私、なにしてんだろ……こんな風に落ち込んでる暇がなんてないのに。
愛美に会わなくちゃ。

そう強く決意すると、心は不思議なほど落ち着いていた。
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