薬指の約束は社内秘で
心で何度も練習した言葉。

いざ口にしてみたら想像よりもずっと胸が苦しくなった。
でもそれは、私からの電話に出れなかった愛美も同じだと思った。

愛美は躊躇いながらも小さく頷き、視線をテーブルに落としながらポツポツと話し始めた。
彼女の話は私が描いた想像よりも、ずっと辛く胸にのしかかるものだった。

やっぱり愛美と葛城さんは付き合っていた——


「付き合ってすぐ……結婚を意識したの。でも反対されて」

消え入りそうな声が鮮明に鼓膜まで響くと耳を塞いでしまいたい衝動に駆られる。
打ちのめされる事実に呆然と、俯く愛美の頭を見つめることしかできなかった。

なんとか気持ちを落ち着かせてから、「反対されたって、もしかして会長に?」と優しく問いかけると、彼女の頭が小さく縦に動いた。


会長を初めて近くで見たあの日。
目尻に皺を刻んだ暗い瞳を思い出す。深い後悔に満ちた声が鼓膜から響いてきた。

『私はまた……同じ過ちをするところだった』

それは会社の為に見合い結婚をした瑞樹のお母さんのことを言っているのだと思った。
でもいま愛美から話を聞いて、もしかしてと思ったら、やっぱりだった。
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