薬指の約束は社内秘で
「忘れられたって思ってた。でも……会ったら気持ちを抑えられなかったの」

愛美はそこで大きくため息をついて、両手で顔を覆った。


出会ってはいけない二人を私が引き合わせてしまったんだ……

心で呟くと愛美を見下ろす葛城さんの姿が頭に浮かんだ。

何かを押し殺すような切なげな瞳。
あれは――まだ彼女を愛してるから?

じゃあ、どうして? 私に好きだなんて言ったの?
すべてを包み込むような眼差しで、幸せを感じていたあのベッドで、愛美を想い続けながら私と…

心が砕けそうになる。目頭でなんとか留まっている涙がその姿を見せようとする。
だから奥歯をギュッと噛み締めてなんとか堪えた。

違う。葛城さんはそんな人じゃない。
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