薬指の約束は社内秘で
でも、愛美と出会ってその想いが蘇ったのなら——

混乱する頭でやっと辿り着いた結論は、周りにある色彩をすべて取り除くものだった。
視界が滲んで、意識が遠のいていく。ぼんやりとした意識を呼び戻したのは、初めて見る愛美の涙だった。

「ごめんっ……ごめんね、愛」

白い頬を一筋の線になって零れ落ちる涙がポツリとテーブルに染みを作ると、ハッと我に返った。

私、なに考えてるんだろう? 
愛美だって辛いに決まってるのに、自分のことしか考えられないなんて最低だ。

そう心で叱責する間も嗚咽混じりの声は、「ごめんなさい。ごめんなさいっ……」とまるで壊れた機械のように同じ言葉を繰り返すから、椅子から立ち上がり震える肩を抱き寄せる。

私の腕にすがりつくように体を預けた愛美から悲痛な声があがった。


「私っ、愛とはずっと友達でいたいって思ってる。だから――だからっ、勝手だってわかってる。でも、辛いのっ。だから、彼と距離を取ってほしいっ」

必死に訴えるその言葉を理不尽なことだとは思わない。
知らなかったことを言い訳にはしたくない。

だって、愛美はいつだって自分のことは後回しだから。



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