薬指の約束は社内秘で
心で呟くと胸がひび割れていくのを感じた。

彼の影を帯びた瞳は愛美を想う痛みにも思えて、やっぱり辛い。
だけど、まっすぐ彼を見つめて声にした。


「嘘つかないでください。それじゃぁ、どうして。どうして、そんな辛そうな顔をするんですか?」

それまでとは違い声を張ると、「それはっ――……」と葛城さんが何かを言いかける。


表情を固くして押し黙る彼に、じわじわと広がり始めた痛みに鋭さが増していく。
だけど、引き攣る頬に、まぶたの端でなんとか堪える涙に、もっと頑張れって言い聞かせた。


「私、愛美の親友なんです。だから、だから——大丈夫です! 愛美は私に嘘なんかつきません。親友の私が保証します」

精一杯の笑顔を浮かべると、彼は声を失い視線を床に落とした。

私との恋を始めてしまったことを後悔してるのかもしれない。そう思ったらやっぱり辛い。

でも、まだ大丈夫。引き返せる。私は大丈夫だから——
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