薬指の約束は社内秘で
「勉強は誰よりも出来たのに人一人の気持ちを掴むことさえ、俺には出来なかった」

掛ける言葉が見つからない。

ありきたりの慰めの言葉を口にしたら傷つけてしまう気がして、繋がれた指に力を加えると、彼はすぐに笑顔を見せた。


「なんて顔、してんだ」

「えっ。どんな顔ですか?」

「世界一不幸な人間を前にして、憐れむ顔」

「それは——」

言葉を詰まらせると葛城さんは小さくため息をつく。


「でも確かに。あの頃は生活環境も変わって、学校でもそんなふうで……。自分が世界一の不幸者だって思って心が壊れる寸前だった。そんな時、この町で藤川に会った。

あの日は藤川の誕生日だったけど。かけがえのない贈り物をもらったのは、俺の方だったんだ」
< 343 / 432 >

この作品をシェア

pagetop