薬指の約束は社内秘で
それは就活やバイトでミスして落ち込んだときに、彼がよくそうしてくれた。

そのあと決まって優しく抱きしめてくれて、それだけで元気になれて、また好きな気持ちが積もったんだ。


ふと懐かしさが胸を過り高い所にある瞳を見つめる。
ふっと柔らかい吐息を落とされた。


「大丈夫だよ。前にも言ったけど、初めて二人を見た時から『二人がそうなる』って思ってたから」

少し含みのある言葉に首を傾げると、「座って話そうか?」と座席がある車両の扉に視線を流され、デッキから移動して二つ空いている座席に並んで腰を下ろした。

「お盆に会いに行ったのは、俺がついた最大の嘘を謝りたかったからなんだ。ずっと騙しててごめん……」

深く頭を下げる瑞樹に、「ううん」と声を掛ける。

瑞樹があのときの男の子じゃなかったことは本当に驚いたけれど、いま思えば不自然なことはいくつかあった。

幼い頃に交わした会話を覚えていないと言われたこと。それと――。
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