薬指の約束は社内秘で
その言葉に目を見開くと、葛城さんは唇の端を吊り上げる意地悪な笑みで付け足した。

「接待って言っても健全なやつな。相手は男だし」

「嘘……。だって、だってそんなっ。誤解を招くような言い方をした葛城さんが悪いですよっ」

「勝手にいやらしい想像したくせに。俺のせいかよ」

「いやらしい想像なんてっ」

「してた。だろ?」

(えぇ、想像してましたよ。そりゃぁ、もう色々と)

もう何度かの挑発的な態度に下唇を噛み締める。葛城さんは勝ち誇った顔で私の手を離した。

「それにしても、なんでこの店?」

「それは、いま人気のお店ですし。日持ちする焼き菓子なんですけど」

少しだけ嘘をついた。
本当は葛城さんに助けてもらったあの日、彼の車の後部座席に置いてあったチラシを見てしまった。

それはあの店の新作スイーツを特集したもので、新作をチェックするほど好きなのかなって思ったのに。
彼の眉間がみるみる皺を刻む。

あれ、好きじゃなかったのかな?

「ごめんなさい。お嫌いでしたか?」

「いや、商品は好き。けど、あの店のパティシエは口と性格が悪い」

「性格って。もしかしてパティシエの仙道(センドウ)さんとお知り合いなんですか? すごい美人ですよね」

パティシエとして有名な彼女をテレビや雑誌で何度か見たことがあった。
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