薬指の約束は社内秘で
ついさっき訪れた店内でも笑顔を絶やさず働いていた彼女は、艶のある黒髪を一つに束ねた和風美人だった。

「美人とか分からないけど。すごい毒舌だぞ、アイツ」

「……」

「何か言いたげだな?」

「いえ、別に、ナニも」

そういう意味でも葛城さんの隣が似合いそうだけど。
心の声を読み取られまいと愛想笑いを浮かべると、葛城さんが不思議そうに言った。

「あの店の系列なら銀座店もあるだろ。それに昼休みに行くこともないのに」

確かに会社から近い銀座にも同じ系列の店がある。

でも葛城さんが持っていたチラシの新作スイーツは表参道店限定だったし。会社帰りだと確実に完売してしまうのは、ネットの評判でチェック済みだった。それは心に留めて、誤魔化すように小さく笑う。

「あぁ。銀座にもお店あったんですね」

「調べてないのかよ。昼飯は?」

「食べましたよ。今日は大盛り天ぷら定食です」

「聞いてるだけで胸やけするな」

私の言葉に葛城さんは呆れたように息をつく。
でも目尻が柔らかく見えたのは、きっと気のせいじゃない。

大盛り天ぷら定食はちゃんと味わうことができなかったけど、やっぱり行ってよかったな。

垣間見れた柔らかい瞳にそんなことを思う。

まぁ、勝手な自己満足だとは思うんだけど。それにしても――
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