薬指の約束は社内秘で
彼の姿が視界に入ると消え入りそうな声が唇から漏れる。
一瞬だけ驚きの色を含ませた瞳と視線が絡み合い、気遣うような瞳で彼は歩み寄ってきた。

「藤川。何かあったか?」

いつだって私を思いやってくれた優しさが心に染みて、目の奥が熱くなる。
顔を見るだけで想いが溢れそうになって、勢いそのままに頭を下げた。


「あのっ。葛城さんの時間を10分。いや、5分でいいので、私に下さい!」

ドクンドクンッと心臓を高鳴らせて、待つこと数秒。


「無理だろ。藤川に、俺の分給分払えるわけない」

ばっさり非情なお言葉を投げ返され、ガクッとくる(えぇ! この展開でこれってあり!?)。

すると放心状態の私の肩が優しく叩かれた。

「冗談よ。飛行機の時間まで余裕もあるから、大丈夫。まったく、藤川さんにはどこまでも意地悪よねぇ」
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