薬指の約束は社内秘で
それからすぐ昼休みが残り3分だと彼に言われて、販売部のフロアへ階段で駆け下りながらふと思った。

毒舌や挑発的な態度でからかわれて腹が立つことも多いけど。あぁやって昼休みを気遣ってくれたり、優しいところもあるんだよね。無駄を嫌う冷徹な男って、違うんじゃないかな?

美希ちゃんから聞いた彼の噂が信じられないくらいに、いまは素直にそう思えた。


定時18時まで残り2時間。
目の疲れを感じてキーボードを打つ手を止めると、3課のみんなにお菓子を配っていた美希ちゃんが隣のデスクに戻って来た。

「全部配り終えましたけど、ずいぶん余っちゃいました」

美希ちゃんはそう言って焼き菓子が残った紙ケースに視線を落とす。

それは2週間前に退職した女子社員が持って来てくれたもので、販売部3課の社員で食べるには多すぎた。

「んー、そうだねぇ。お隣さんにおすそ分けしようか」

「そうですよね! もう3時だし。青山君もお腹を空かせてるはずです」

隣の2課に新卒で入社した男性社員は、体育会系の爽やかな笑顔が美希ちゃんのストライクゾーンのど真ん中らしい。
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