薬指の約束は社内秘で
淡々とあの日のことを語る彼の唇が、短い息をつく。

肩を打ちつけるシャワーの熱と、優しい告白で心地良い温度に温められた体ごと、優しく引き寄せられる。
一度強く抱きしめられてから、首筋に顔を埋めた葛城さんが切なげな声を漏らした。


「ホテルに連れ込まれそうな藤川を見て、堪らない気持ちになった。

そのときに――いや本当は。気づかないだけで再会したあの時に、気持ちは動いてたのかもしれない」


素直な想いを吐き出す唇に、優しく包み込む指先に、言いようのない想いが込み上げる。

腕の力を緩めた彼の唇にちょっと背伸びをしてキスをすると、葛城さんは驚いたように目を丸くした。


「そんなに煽るな。このままここで、抱きたくなるだろ?」

少し照れくさそうな声は、いつだって私の胸を温かくしてくれる。

優しい色を添えた瞳がゆっくり降りて、もう何度目かのキスを重ねる。
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