薬指の約束は社内秘で
胸を突く感動が体全体に染み渡っていく。
しばらく声を失くして目を奪われていると、「元気出たか?」と低い声が頬にかかった。

「うん。なんかね昔から富士山見るだけで、ホッとするっていうか、元気になれちゃうんだよね――って、あれ。この会話、前にもしたことあった?」

ふと似たような会話をした気がして、体をよじって優生を振り返ろうとするも。


「正面向いてろ」

すこし怒ったような声を返されてしまう。

一瞬見えた顔が少し赤かったように見えたんだけど。朝焼けのせいかな?

そんなことを考えていたら、耳を澄まさないと聞き逃してしまいそうなボソッとした囁きが落ちてきた。

「愛が言ってたんだ。俺にじゃないけどな……」

「えっ?」

私が言ってた? いつ、誰に、話してたんだろう? しかも、それを優生が聞いてたなんて。


「それって、どこで――」

思わず聞き返したら後ろから抱き寄せる優生の腕にまた少し力が加わる。意外な本音が彼の唇から零れ落ちた。


「本当は、このシチュエーションであげるつもりだったんだけどな……」

「シチュエーション?」

首を斜めに傾けると、一瞬の間を置いてチッと舌打ちが聞こえてきた。
「しまった!」というようなそれに、珍しく女の勘がフル稼働する。
< 428 / 432 >

この作品をシェア

pagetop