薬指の約束は社内秘で
「こっちこそごめんね。これ、書いたの私じゃない」

私の言葉に彼女が目を見開く。

「たぶん男っ気のない私を心配したタチの悪いイタズラじゃないかな。課長あたりかなぁー、なんて! だから気にしないで。本当にごめんね」

不安げな顔の彼女に微笑んで総務部を後にした。


足を速めながら腕時計に視線を落とす。

うわっ、プレゼン開始まで時間がない!

2階で止まっているエレベーターは諦めて、2段飛ばしで階段を駆け上がる。

「くっ、苦しいよ。普段の運動不足が……」

さっきは課長のせいにしちゃったけど、真犯人が分かったら葛城さんにかけた以上の呪いをかけてやる。
そう復讐の誓いを立てたところで、プレゼン会場の14階に辿り着いた。ぜいぜいと息を切らし腕時計に視線を落とす。

よかった、開始時間の3分前。
自分の足が意外と衰えていないことに満足しながら、右膝に片手をついていると、

「準備運動か? 気合いの入れ方間違ってるだろ」

すっかり聞き慣れた意地悪な声が火照った頭に落ちてきた。
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