薬指の約束は社内秘で
まったく飄々としちゃって、相変わらずなんだから。

急激な回転を掛けた足はさすがに痛むけど、それをなんとか速めて葛城さんに追いつこうとする。
「葛城さん」と声を掛けたところで、「おっと」という驚きの声と共に、すぐ横の男子トイレから飛び出た影と肩がぶつかる。

ぐらりと揺れた体が前のめりに倒れなかったのは、前にいた葛城さんが私の体を支えてくれたから。
でも強い衝撃を肩に受けて、両手に抱えていた資料と筆記用具が床に飛び散ってしまった。

「うわっ。ごめん、マジでごめん!」

焦った声で散らばった書類を掻き集めてくれたのは、田村君だ。
そこに、この前見た高圧的な態度は微塵もない。

心底申し訳なさそうな顔で頭を下げる彼に、

「どうせ、それもポーズだろ。コラ!」
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