薬指の約束は社内秘で
「もうっ。色気より食い気ですかぁ? そんなこと言ってたら葛城さんを誰かに奪われちゃいますよ。先輩はみんなより一歩リードしてるんですから」

「そんなことないし。色気じゃお腹は膨らまないから」

「はぁー。もう、いいです」

私のやる気のない素振りに、美希ちゃんは淡いピンク色の頬を膨らませた。
旅館で用意してくれた浴衣は色や柄が数種類あって、みんなそれぞれ自分に似合うものを探している。

そう。みんなこの後のお祭りで、葛城さんの隣を歩きたいと願ってる。

彼は、この中の誰と歩くんだろう。

課長が用意してくれた女子用の部屋で、綺麗に着飾った彼女達を見ながらそんなことを思う。
滅多に着る機会のない浴衣。美希ちゃんが勧めてくれたそれを着たい気持ちはあった。

でも、綺麗に着飾ったって――
言葉の続きを考えようとするとこめかみが痺れて、気が付いたら美希ちゃんの手を押し返していた。

葛城さん争奪戦に付き合いで参加するらしい美希ちゃんに「じゃぁね」と声を掛けてから、ひとりで部屋を後にした。
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