薬指の約束は社内秘で
行き交う人で賑わう細い路地。
酔いもまわっているせいだろうか? 彼の隣には誰もいないように見える。

あぁ、そっか。

ぴょんっとその場で軽くジャンプしてみる。背の高い葛城さんの後ろに隠れた浴衣姿の美女が――いない。

あぁ、なるほど。
私なんかに話しかけたもんだから、怒って先に行っちゃったんだ。

今度はものすごい勢いで後ろを振り返ってみる。
するとホットドッグを手にした男の子二人組に指をさされ、「すげぇー顔!」と爆笑されてしまう。
さすがに恥ずかしくなってぐっと息を詰まらせると、長く深いため息を頭に吐き出された。

「小学生に笑われるとか、恥ずかしいだろ」

呆れた声を漏らした葛城さんは、どうやら――…

「おひとりですか?」

「さっきまで10人くらいいたけどな。旅館に一度戻って巻いてきた」

すっかり慣れたような言い方に、「へぇー」と気のない返事をする。

なぜだか、ついさっき食べたチョコバナナが急に消化を止めてしまったように胃の奥がむかむかしてきて、「さっきは楽しそうでしたけどね」と呟いていた。
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