薬指の約束は社内秘で
「藤川はつまらなそうだったな」

「私は葛城さんと違って、モテませんから」

語気を強めてしまった口調に、「それは顔を見ればわかる」とか「つまらなそうな人生だもんな」だとか。
痛烈な毒が返されると思ったのに、葛城さんは気にしてないのか明後日の方向を見ている。

暗闇をほんのりと明るく照らす露店の照明と、境内の入り口から続く赤提灯が彼の頬を淡いオレンジ色に染める。
行き交う人の楽しげに弾んだ声がどこか遠くに聞こえて、説明のつかない想いに胸が締めつけられた。

楽しいはずの場所で、私、何してるんだろう。いまの葛城さんへの態度。ものすごく感じが悪かった。

いまっていうか……今日はずっと心にとげを刺したままでいる気がする。
ずっと何かに焦るように気持ちが落ち着かないし。イライラしてる。いまの自分、どんな顔してる?

次々湧き上がる感情が自分でもコントロールできない。
罰悪く俯いた頭に「なぁ」と短い声が落ちてきた。
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