薬指の約束は社内秘で
先にホットドッグを食べ終えた葛城さんが東京よりずっと澄んで明るい夜空を見つめながら、ポツリと言った。

「あいつら、ちゃんと家に帰れたかな」

「携帯で電話すればお母さんが迎えに来てくれるって言ってたから、大丈夫だと思いますよ。かわいい子達でしたね」

「どこがだ」

葛城さんは眉間に皺を寄せ吐き捨てると長い足を私の方へ組み返した。
空いていたふたりの距離が縮まり、澄みきった空気に葛城さんの匂いが混ざる。

ただそれだけで、数時間前に飲み終えたビールが一瞬で体に回ったように頬が熱くなる。
慌てて距離を取ろうとすると右腕が優しく掴まれ、斜めに傾いた顔がゆっくり近付いてきた。

息遣いを感じるほどの距離に、煩く鳴り響く鼓動に、息が詰まりそうになるのに。
葛城さんはいつもの涼しげな顔で、私の右手にある綿あめを口にした。


「久しぶりに食ったけど、けっこう美味いな」

変わらない表情で口元を拭う彼に、体の硬直が解かれる。
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