薬指の約束は社内秘で
私が特別なんじゃない。きっと葛城さんは自然に出来てしまうだけ。
意地悪で毒も吐くけど、優しく気遣ってくれることもあるから……

煩い鼓動に言い聞かせ、曖昧な笑顔を浮かべた。

「ありがとうございます」

変に緊張して掠れた声が恥ずかしくなる。逃れるように膝の上に視線を落した。
こんなときこそ得意の毒舌を言い返してほしいのに彼は無言で、私の髪についた綿あめを梳き続ける。

柔らかい手つきに耳朶を掠めると、少し前まで心地良かった静寂もいまはなんだか息苦しい。
何か適当な話題を振ろうと頭を働かせると、唐突な問いかけが静寂に響いた。

「藤川は、どうしてうちの会社に入った?」

綿あめを払い終えた手が私の髪から離れていく。
明るい空を仰いだ彼を追って、自然と目線が夜空へ向いた。
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