薬指の約束は社内秘で
心でそう問いかけるのは、もう何度目かわからない。

消化できない想いに蓋をするように、ため息をつく。
頬に落ちた髪を耳にかけると優しく髪を梳いてくれた指先の感触がまだ残っている気がして、胸が震える。

そんな私を見透かしたように、柔らかい声が届いた。

「私としては先輩の気持ちが、その彼に動いてたら嬉しいんですけどね」

そう言ってにっこり笑う美希ちゃんは、私が3年も恋をしてないことを知っている。
自分のことのように喜んでくれる彼女を見ていると、凝り固まった心が少しだけ温かくなる。

いつだったか美希ちゃんに誘われた合コンの帰り道。

意気投合した男性と駅まで向かう途中、強引にキスされそうになってその人を突き飛ばしたことがあった。

「キスくらいでなんだよっ」

去り際に吐き捨てられ、嫌悪感が増したのを思い出す。

でも、葛城さんの時は? 心に問いかけると、否定できない自分がいる。

無意識なときほど素直な感情が出る。
美希ちゃんの言うように、それが正しいとしたら――……

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