On Your Marks…~君と共に~



「……っ!」



見た瞬間、言葉が出なかった。



胸がざわめいた。



じわーっと汗をかくような気温でもないのに、体が熱くなった。


そして……目頭が熱くなる。


鼻がツーンと痛む。



胸の奥にしまっていた、あたたかいおもいが溢れてくるのがわかった。


ずっと、ずっと、もしかしたら、あなたがこうなるのをあたしは待っていたのかもしれないね。





「……瞬っ!」



先にその名を口に出したのはお父さんだった。


お父さんはいつの間にか椅子から立ち上がって、あたしのその記事を覗き込んできた。


懐かしい名が聞こえ一瞬、涙が溢れそうになった。



「……あたしいなくても……瞬走ってるよ。しかも、タイムさ10"20だよ?……日本一のスプリンターだよ」



なんでこう……



あっという間に、瞬はあたしの先をいちゃうかな……



あたしが追い付こうとすればするほど、あいつはあたしの先を走って行っちゃうんだ。


だからあたしはあんたの足跡を頼りに進むしかないんだよ。




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