ポジティブGIRLと愉快なBOYたち
もと来た道を戻りながら横並びになってしりとりを続ける。





出っ歯、パイナップル、ルアー、赤、痒み止め、綿棒、うさぎ、とリズムよくきたところで後ろから「おーい」という声がした。





自分たちには関係ないのでそのまま同じ速度で家路を歩く。





しかし「おーい」と誰かを呼び止める声は止まない。それどころか俺たちに向けられているような気もしてきた。





まさかなと思いながら少し振り返るとそこには、眼鏡をかけたスーツ姿の女性が、覚束ない足取りで俺たちを追いかけてきていた。





見覚えのない彼女に首を傾げるが、その手にある黒い財布に足を止める。


あれは...あれじゃないか。さっきまで俺が持ってたやつじゃないか。





「郁翔、涼依」





名前を呼ぶと2人は振り返って俺をみる。





郁「どした?」



「あの人」





指差した先にいるヨレヨレの女性に怪訝そうな表情をする涼依。





「あの人が持ってるの、あの財布」




郁「...あ、見覚えある」




涼「...持ち主?」




「みたい」




郁「にしても走るのおっそ!」




「こら、そういうこと大声で言わない」





郁翔の口を手のひらで覆ったのとほぼ同時に、女性が走るスピードを緩めた。





少しずつ近づいてくる女性は流れる汗をそのままににっこりと微笑みかける。


やっぱり俺たちに用だったんだと確信すると共に、無視してて悪かったなと反省する。





女「あの...っこれ、貴方たちが?」



「あぁ、はい」





顔の前で翳すそれはまさにあの財布で。





女性は俺の返答に物凄く優しい笑みを浮かべて頭を下げた。





女「あ、ありがとうございました...!」




「いや、あの...全然」




郁「社長さんですか?」




「こら郁翔」




女「いえ、課長です」




涼「へぇ」




郁「まあ課長さんなら、それもそうか...」




女「?」




「なんでもないです!気にしないで下さい」





女性に気づかれないように後ろ足で郁翔のすね辺りをかかとで蹴った。


こいつ失礼すぎる。



< 117 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop