ワンコそば
 二人の沈黙を破るようにきいろが居間のちゃぶ台にから揚げの山盛りを置いた。

「時間がなかったから簡単なメニューだけど足りるかな?」

何人前だと思うくらいのから揚げてんこ盛りに、から揚げだけ食べるのかと勘違いしてしまいそうだ。

きょとんとしている玲央の目の前にどんぶり飯に味噌汁、サラダが運ばれてきた。

「まあ、話は飯の後だな」

土岐枝親子が手を合わせて「いただきます」と目を閉じるので例に習って玲央も頭を下げる。

頭を上げて二人を見ると、うっかり落としてしまった粉末を吸い上げる掃除機のように、目の前の食べ物が吸い込まれていった。

なに、この大食漢!

「あんたも遠慮しないで食え!」

二人が玲央へ目を向ける。

遠慮してんじゃなくて呆れてるの!

この親子を密林に放したものなら一週間で周辺の生き物が絶滅するよ?

もう数年も家族と食卓を囲んだことなどない。

しかもこんな下品な食卓は見たことがない!

目の前の光景がおかしくて、玲央は声を出して笑いそうになるのをこらえた。

暫く笑ったことがなかった玲央が、口の端を歪めている姿は滑稽に見えたかもしれない。

親子は心配そうに彼の顔を覗き込んだ。
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