ワンコそば
 何かまずい事でもしたのか?

玲央は自分に注目する親子から顔を離すように後ろへのけぞった。

「早く食べないとおかずがなくなるぞ?」

きいろが玲央の茶碗にから揚げを5個ばかりつまんで入れる。

揚げたてはさくりといい音を出して、コンビニの弁当よりうまかった。

玲央は黙って食事を始めた。

何から話そうか?

どう説明しようか?

可哀想な演技をしようか?

親子からは聞きにくいのか話しかけてこない。

玲央が口を開くのを待っているようにも見える。



親子にはこれから聞かれる質問を予測してどの答えがベストか考えているように見えた。

何を話そうとも何をしようとしていたかはきいろは知っている。

父親である佑造にすでに話したかもしれない。

片付いた食卓に湯のみが運ばれてきた。

きいろが上目遣いに玲央を覗く。

先ほどから心配されてばかりだ。

沈黙を破ったのは佑造だった。

「俺が一番心配なのは親が心配してねぇのか?ということだ」

「心配はしていません。僕は部屋にいると思ってますから」

玲央はきっぱりと答えた。

「疑われるようでしたら僕の家に電話をかけてみてください」

佑造は携帯を取り出すと玲央の言う番号にかけ始めた。

「玲央君の友人ですが…はい、」

「玲央君の友人だって!そんなしわがれた声の友人、どんな友人だよ!」

くすくす笑いながらきいろが玲央の横に移動する。

玲央も思わず吹き出してしまった。



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